シビックタイプRユーロ(FN2)の最高出力は201PS/7,800rpm。FD2より24PS低いものの、Hondaは数字より欧州の多様な道路での扱いやすさを重視していました。
2009年に日本へ導入されたFN2は、K20A自然吸気エンジン、6速MT、LSDを組み合わせた3ドアのタイプRです。この記事では「201PSはどんな性能なのか」「なぜFD2より馬力が低いのか」を、Hondaの公式資料を中心に整理します。
シビックタイプRユーロの馬力は何PS?
シビックタイプRユーロ(FN2)の最高出力は201PS(148kW)/7,800rpm、最大トルクは193N・m(19.7kgf・m)/5,600rpmです。
Hondaの公式スペックによると、搭載エンジンはK20A型。総排気量1,998ccの水冷直列4気筒DOHCで、ターボを使わない自然吸気エンジンです。圧縮比は11.0となっています。
主要スペックをまとめると、FN2がどんなタイプRなのかが見えてきます。
| 項目 | シビック TYPE R EURO(FN2) |
|---|---|
| エンジン型式 | K20A |
| 総排気量 | 1,998cc |
| エンジン | 水冷直列4気筒DOHC |
| 過給機 | なし(自然吸気) |
| 最高出力 | 201PS(148kW)/7,800rpm |
| 最大トルク | 193N・m(19.7kgf・m)/5,600rpm |
| 圧縮比 | 11.0 |
| 内径×行程 | 86.0×86.0mm |
| 駆動方式 | FF |
| 変速機 | 6速MT |
| 車両重量 | 1,320kg |
| 乗車定員 | 4人 |
| 使用燃料 | 無鉛プレミアムガソリン(ハイオク) |
ここで重要なのは、201PSという数字だけでなく、その最高出力を7,800rpmという高回転域で発生することです。
最大トルクも5,600rpmで発生するため、低い回転数から大トルクで押し出す現代のターボ車とは性格が異なります。ギアを選びながら回転数を上げ、K20Aの性能を引き出していくタイプです。
排気量1Lあたりの最高出力を単純計算すると約100.6PS/L。しかも過給機に頼らない自然吸気エンジンなので、当時の2.0Lスポーツエンジンとして高い出力密度を持っていたことが分かります。
僕がこの記事を書こうと思った理由も、ここにあります。
FN2について検索すると「201PS」、同時期のFD2について調べると「225PS」という数字が目立ちます。僕自身も最初は「同じK20Aなのに、なぜ24PSも違うんだろう?」と疑問に感じました。
ところがHonda自身の資料まで調べてみると、FN2は単純に馬力でFD2へ挑んだクルマではありませんでした。
むしろなぜ201PSなのかを調べることが、FN2というクルマの狙いを理解する近道だったのです。
出典:Honda 『シビック TYPE R EURO(2012年6月終了モデル)|Specification』 https://www.honda.co.jp/auto-archive/civic/type-r/2011/EURO/spec/
FN2の201PSはどんなK20Aエンジンから生まれる?
FN2のK20Aは、最高出力の数字だけを追うのではなく、欧州のさまざまな道路で扱いやすい回転特性を狙ったエンジンとして見ると分かりやすくなります。
これは単なる僕の印象ではありません。
Hondaが公開している歴代シビックTYPE Rの解説では、FN2について、石畳、狭いワインディング、高速道路など路面状況が大きく変わる欧州で、リラックスしながら正確に操作できる走行性能を追求したと説明しています。
さらに2009年の東京モーターショー資料では、FN2のエンジンについて、荒れた路面やタイトなコーナーを速く気持ちよく走り続けるため、スペックそのものを追求するのではなく、スムーズに回る方向へチューニングしたことが示されています。
この公式説明は、201PSという数字を考えるうえでかなり重要です。
FN2のK20AにはVTECとVTCが採用され、Hondaの歴代モデル解説では、2次バランサーによってスムーズな回転フィールを狙ったことも明記されています。
2次バランサーは、エンジン内部で発生する振動を抑えるための仕組みです。
つまりFN2は「K20Aなのに201PSしかない」というより、201PSを発生するK20Aを、欧州の多様な道路で気持ちよく使えるよう仕立てたと捉える方が、Hondaの説明に近いわけです。
そして、そのエンジンと組み合わされるのが6速MTです。
FN2にはオートマチックの設定がなく、6速MTでK20Aの回転域を自分で選びながら走る構成になっています。
LSDもポイントです。
LSDは「馬力を増やす装置」ではありません。左右の駆動輪に大きな回転差が生じるのを制限し、旋回時などに片側のタイヤへ駆動力が逃げすぎるのを抑える機構です。
前輪で操舵と駆動を担当するFFスポーツでは、エンジン出力を路面へどう伝えるかが重要になります。
そのためFN2は、エンジン単体の201PSだけを見るより、K20A+6速MT+LSD+FFという一つのパッケージとして考えた方が理解しやすいでしょう。
僕はここがFN2の面白いところだと感じます。
馬力の検索から入ると「201」という一つの数字に目が行きますが、その数字がどの回転域で生まれ、どう前輪へ伝えられるのかまで見ていくと、スペック表が急にクルマの性格を語り始めます。
出典:Honda 『CIVIC TYPE R|歴代モデル紹介|SPORTS DRIVE WEB』 https://www.honda.co.jp/sportscar/sportscar/civic_type_r/
出典:Honda 『第41回東京モーターショー2009 Honda展示車両 CIVIC TYPE R EURO』 https://www.honda.co.jp/factbook/motorshow/2009/motorshow_2009.pdf
シビックタイプRユーロはなぜFD2より24PS低い?
FN2が201PSなのに対し、日本向け4ドアのFD2型シビックタイプRは225PS。同じK20A型でも最高出力には24PSの差があります。
この差を「FN2の性能が低いから」とだけ考えると、両車の開発方向の違いを見落としてしまいます。
FD2についてHondaは、FF TYPE R史上最速を目指し、K20Aのさらなる高出力化へ取り組んだと説明しています。
具体的にはスロットルボディの大径化、インテークマニホールドの単管ショート化、吸気ポートの加工、圧縮比11.7、排気抵抗低減など、細部まで高出力化のための変更が加えられました。
一方、FN2についてHondaが強調しているのは、最高出力競争ではありません。
欧州の石畳、ワインディング、高速道路など、路面条件が大きく異なる環境でも正確に操れること。そしてエンジンについても「スムーズに回る方向」のチューニングを選んでいます。
つまり、同じK20Aという名前でも狙いが違います。
FD2はK20Aの高出力化を強く追求し、FN2は欧州の多様な道路で速さと扱いやすさを両立する方向へ仕立てた。
これなら24PSの差も、単純な優劣ではなく設計思想の違いとして理解しやすくなります。
車重にも差があります。
FN2は1,320kgです。一方、FD2は仕様によって確認が必要ですが、代表的なTYPE Rでは1,270kgで、単純比較ではFN2の方が約50kg重くなります。
最高出力と重量だけで比較すれば、FD2の方がよりストイックな性能志向であることは否定できません。
ただ、ここで僕が大事だと思うのは「FN2をFD2の代用品として見ない」ことです。
たとえば登山靴とランニングシューズを比べて、片方だけを「重いからダメ」と評価しても、それぞれが想定する使い方を無視してしまいます。
FN2とFD2にも似たところがあります。
どちらもK20Aを搭載したTYPE Rですが、Hondaが公開している開発資料を読む限り、目指した走りは同一ではありません。
僕自身、調べる前は「FN2はなぜ225PSではないのか?」という見方でした。
調べた後はむしろ、「HondaはなぜFN2を201PSという仕立てにしたのか?」と考える方が、このクルマを理解しやすいと感じています。
出典:Honda 『CIVIC TYPE R 2007.3.29 エンジン』 https://www.honda.co.jp/factbook/auto/CIVIC_TYPE_R/200703/04.html
出典:Honda 『第41回東京モーターショー2009 Honda展示車両 CIVIC TYPE R EURO』 https://www.honda.co.jp/factbook/motorshow/2009/motorshow_2009.pdf
FN2の201馬力を支える車体と欧州向け設計とは?
FN2は201PSのK20Aだけでなく、欧州向け3ドアハッチバックを土台にした車体全体で性格が決まっています。
Hondaによると、FN2のボディサイズは全長4,270mm、全幅1,785mm、全高1,445mm。ホイールベースは2,635mm、車両重量1,320kg、乗車定員4人です。
そして、この「EURO」という名前は単にイギリスで作られたことを表しているわけではありません。
Hondaのコンセプトページでは、TYPE R EUROについて、日本で育ったTYPE Rが欧州へ渡り、その道路環境に合わせて発展したモデルという位置付けが説明されています。
さらに現在公開されているHondaの歴代モデル解説では、2007年からイギリスで生産されていた欧州専用CIVICをベースにした、欧州における2代目CIVIC TYPE Rだったことが確認できます。
ここがFN2を理解するときの重要な背景です。
欧州では国や地域をまたぐと路面状況が大きく変化します。
Hondaは石畳、狭いワインディング、高速道路といった具体的な環境を挙げ、「あらゆる路面で速く走れる」ことを求めたと説明しています。
これは、よくある「FN2は快適性重視らしい」という曖昧な話より、ずっと分かりやすい根拠です。
Honda自身が、スペックだけを追わず、荒れた路面を含めて速く、気持ちよく移動できることを重視したと説明しているからです。
FN2のリアサスペンションは、独立懸架ではなくトーションビーム系の車軸式です。
形式だけを見て「TYPE Rなのに簡素」と判断したくなるところですが、サスペンションは形式だけで最終的な走行性能が決まるわけではありません。
車体剛性、ばねやダンパー、タイヤ、ブッシュ、アライメントなどを含めた全体の設定でクルマの動きは変わります。
だから僕なら、中古FN2を見るときにも「リアがトーションビームだから」という一項目だけで判断しません。
それよりも、Hondaがどんな道路で、どんな走らせ方を想定して車体全体を調整したのかを見る方が、このクルマの性格をつかみやすいと思います。
出典:Honda 『シビック TYPE R EURO(2012年6月終了モデル)|Specification』 https://www.honda.co.jp/auto-archive/civic/type-r/2011/EURO/spec/
出典:Honda 『シビック TYPE R EURO|Concept』 https://www.honda.co.jp/auto-archive/civic/type-r/2011/EURO/concept/
出典:Honda 『CIVIC TYPE R|歴代モデル紹介|SPORTS DRIVE WEB』 https://www.honda.co.jp/sportscar/sportscar/civic_type_r/
FN2の限定台数と201PSを今どう評価する?
FN2は日本で大量販売されたモデルではありません。
Hondaは、欧州専用CIVICをベースとするTYPE R EUROを2009年と2010年に日本で台数限定販売したと説明しています。
2009年モデルについては、Honda Accessが2010年9月に公開した資料で、2009年11月に2,010台限定で発売されたことが明記されています。
2010年モデルは1,500台が追加され、国内向けとして知られる台数は合計3,510台です。
Honda公式のアーカイブでは、TYPE R EUROは2009年11月発表、2012年6月終了モデルとして掲載されています。
ここからは、確認できた事実を踏まえた僕なりの考察です。
FN2は「FD2より24PS少ないTYPE R」という見方だけでは、かなり大事な部分を取りこぼすクルマだと考えています。
もちろん、最高出力なら201PSより225PSの方が大きいです。
同じK20Aを積むFD2が高出力化を徹底していたこともHonda自身の資料で確認できます。速さや最高出力を比較するなら、この差を無視する必要はありません。
ただしFN2についても、Hondaは「スペックを追い求めるのではなく」というかなり明確な説明を残しています。
ここが僕には面白く感じられました。
TYPE Rという名前からは、どうしても「もっと軽く」「もっと硬く」「もっと馬力を」と想像してしまいます。
ところがFN2では、欧州の荒れた路面まで含めて速く快適に移動できることを狙い、2次バランサーを備えた201PSのK20Aを採用しました。
これは妥協というより、評価する物差しそのものを変えたTYPE Rと考えた方が自然ではないでしょうか。
そして2026年現在、中古車としてFN2を見るなら、もう一つ忘れたくないことがあります。
カタログに201PSと書かれていても、現在市場にある一台一台が新車時と同じ状態とは限りません。
2009~2010年に国内販売されたクルマなので、年式を考えればエンジンのカタログ出力だけでなく、整備履歴や消耗部品の状態を見ることが大切です。
DIYで車両状態や消耗品を見るときの感覚で考えても、古いスポーツモデルほど「元々何馬力だったか」と「現在どんな状態なのか」は分けて考えた方が安心です。
たとえば購入前なら、エンジンオイルの管理履歴だけでなく、冷却系、クラッチ、6速MT、足回り、ブッシュ類、ブレーキなどを確認したいところです。
改造されている個体なら、純正状態から何が変更されているのかも確認したいですね。
つまり馬力は中古FN2選びの入口であって、ゴールではありません。
201PSという数字を知ったら、次は「どんな回転特性なのか」「どういう道路を想定して作られたのか」「今その個体がどんな状態なのか」と一段ずつ掘り下げていく。
この見方をすると、FN2をFD2や現在のターボ車と単純な馬力勝負だけで比較する必要がなくなります。
個人的には、ここにFN2の今だからこその面白さがあると思います。
最高出力7,800rpmの2.0L自然吸気K20Aを6速MTで操作するという組み合わせ自体、現在の新車では珍しいものになりました。
だからFN2の201PSは「少ないか、多いか」だけではなく、どう使わせるための201PSだったのかまで含めて評価したい数字です。
なお燃費について、Honda公式の環境仕様ではJC08モード10.8km/L、10・15モード11.6km/Lとなっています。これは当時の試験モードによるカタログ値であり、現在の実燃費を保証する数字ではありません。
速さだけに振り切らず、欧州での移動性能まで考えたTYPE R。
その背景を知ったうえで201PSという数字を見ると、FN2のキャラクターはかなり分かりやすくなると思います。
出典:Honda 『CIVIC TYPE R|歴代モデル紹介|SPORTS DRIVE WEB』 https://www.honda.co.jp/sportscar/sportscar/civic_type_r/
出典:Honda Access 『Honda「シビックTYPE R EURO」専用Gathers デュアルサイズナビコンポキットを発売』 https://www.honda.co.jp/ACCESS/press/pdf/2010090901.pdf
出典:Honda 『シビック TYPE R EURO|Ecology』 https://www.honda.co.jp/auto-archive/civic/type-r/2011/EURO/ecology/
まとめ:シビックタイプRユーロの201馬力には理由がある
シビックタイプRユーロ(FN2)の最高出力は201PS(148kW)/7,800rpm、最大トルクは193N・m(19.7kgf・m)/5,600rpmです。
搭載されるK20Aは1,998ccの自然吸気直列4気筒DOHCで、6速MTと組み合わされます。車両重量は1,320kgです。
FD2の225PSと比べると24PS低いものの、Hondaの公式資料を見ると、その理由を単純な性能差だけで説明できないことが分かります。
FD2がK20Aの高出力化を追求したのに対し、FN2は石畳、ワインディング、高速道路など欧州の変化に富んだ道路で正確に操れることを重視しました。エンジンにも2次バランサーを採用し、スムーズな回転フィールを狙っています。
だからFN2を見るときは、「201PSしかない」ではなく、「欧州のさまざまな道路で使うために仕立てられた201PS」と考えると、その設計思想が見えやすくなります。
そして中古車として選ぶ現在は、馬力だけでなく整備履歴や車両状態も重要です。
スペック表の201PSを入口に、K20Aの回転特性、6速MT、LSD、欧州向けの車体設計まで見る。そこまで分かれば、FN2がFD2とは違う方向へ進んだTYPE Rだったことが、よりはっきり見えてくるはずです。
よくある質問
シビックタイプRユーロは何馬力ですか?
FN2型シビックタイプRユーロは201PS(148kW)/7,800rpmです。最大トルクは193N・m(19.7kgf・m)/5,600rpmです。
FN2とFD2は何馬力違いますか?
FN2は201PS、FD2は225PSなので、最高出力には24PSの差があります。ただしHondaの公式資料では、FD2は高出力化、FN2は欧州の多様な道路での走行性能を重視したことが確認でき、開発方向そのものが異なります。
FN2のK20Aには2次バランサーがありますか?
はい。Hondaの歴代CIVIC TYPE R解説では、FN2の2.0L DOHC i-VTECエンジンに2次バランサーを採用し、スムーズな回転フィールを狙ったことが明記されています。
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